難病患者の僕が欲しかったもの
難病患者の僕が欲しかったもの
10歳で、難病の希少癌(骨肉腫)を発症した僕が、一番欲しかったもの。
それは、特効薬ではなく、あることだった。
小学三年生の僕は、周りの子供よりも、少し人見知りをしていた。
人見知りをする性格のため、相手に自分の考えや、意見を伝えることが苦手だった。
そんな僕が、ある日突然に難病患者になったことで、さらに周りの人との壁をつくり、心を閉ざしてしまった。
僕は、その時考えていた。
それは、「孤独」。
- 「僕は、この世で、一人ぼっちなんだ」
- 僕は、難病になったことさえも忘れかける程、心の中は孤独感で満たされた。
- 孤独になると、周りの声が聞こえなくなった。
- それと同時に、将来の不安も感じなくなった。
- 僕には、未来がない。
- 僕は未来に生きることができなくなった。
- みんなと同じような人生を歩むことができない。
- きっと、人生って、そういうものなんだ。
- あっという間に終わる人生。
- 僕はまさに、その「あっという間に終わる人生」を経験するために生まれてきたのだろう。
- 見方を変えれば、僕はこの瞬間に、人生を悟った。
- 今でも不思議なことだが、人生に対して、そのような感覚を感じると、少し勇気が出てきたように記憶している。
- 何かに包まれたような、守られているような。
- だけど、…
- だけど、僕は、止まることのない涙をいっぱい流していた。
- やっぱり、僕、さみしいんだ。
- 誰か、僕を助けてください。
- 誰でもいいから、
- 僕を助けてください。
- 僕の心は、激しく波打つ海の様に、次々と複雑な感情が押し寄せた。
- そして、気付くと眠っていた。