THE TIME 刻の記憶 【Roots】
ほっし校長マガジン【Roots】8月号
ガンを告げられた人々の心の叫びをことばに残す
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あなたのルーツ探しの旅
はじめます
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ガンサバイバー
それは、ある日突然やってくる
そして、決して逃れることはできない
自分の身体を蝕む病
現代医学では完治できないケース
痛み、苦しみ、精神的ダメージ
解消されないストレス
この先の未来、光、希望を失い
孤独
これらは、ガンサバイバーとしての試練であり、たとえ乗り越えたとしても、その先には、さらに別の試練が待っている
それは、医学的な「病」ではなく
心の中の闇
自身が乗り越えて行かなくてはならない本当の試練は、そこにある
心の中の闇を明らかにし
それに対処する
ガンサバイバーの闘いは、ガンが消えた後も続く
このマガジンは、その闘いの様子を配信するもの
毎月テーマ毎の「闘い」を配信
おなじ悩みをお持ちの患者さんやその近親者さん、ガンサバイバーの皆さんに
「闇」との向き合いかた、悩みの解決方法を模索するツールとして活用していただきたいと思います
◼️ガンを告げられた人々の心の叫びをことばに残す
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今回、私は旅に出ました。 ひとり旅です。 その旅先には、私が求める旅の答えがあるように思えたのです。
そして、その旅先で観たものや触れたものから、私の内に秘めた答えを見つけることができました。
今から40年前でも思出す
私には素直に喜べない過去があります。 それは夏休みです それは夏休みに入るとともに、入院生活が始まり、病院で夏休みを過ごした経験からでした。 「なんで、なんで、」 「自分だけ、夏休みがないの?」 「川で釣りしたり、クワガタ採集したり」 「予定がいっぱいあったんだ」
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無情にも強引に決められた運命
半ば強制的に思えたのです。 「とんでもない病になったんだ!」 「大きい病院に行って精密検査を!」 僕の夏休みは、1日1日と、無くなっていった。 実は、 僕は、画家の先生に絵を習っていた。 先生は、中田先生と言って、広島にアトリエを構え画家活動をされている油絵画家だった。 毎年、夏休みの間は、習い事はお休みだったが、僕は勝手に、中田先生のところに行って 僕の作品を観て貰っていた。 「絵の具は塗ったらだめだ、色を置くんだよ」 先生はいつも、優しく教えてくれた。 中田先生が僕の絵に色を足してくれた、 決まって、黒、紺色、緑、朱色などを混ぜた色を、次々と、数ヵ所に置いていった。 その置かれた色は、僕の描いた絵を引き締めてくれた。 「先生、凄い!」 「全然、すごくなった!」 だけどね、先生、この絵は、先生が筆を加えたから、学校には提出できないや なんて、心で思ったが、内心はとっても嬉しかった。 しかし、今年の夏は、こんなことも無理だ
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運命と定め
この世が突然ひっくり返ってくれないか
後にも先にも、僕がこんなことを本気で願ったことはなかった。 「お子さんは、癌の一種を発症しています」 「非常に珍しい癌の種類で、症例がほとんどありません」 「どれだけ生きることができるかも」 「手術事例も少なく、なんとも言えません」 そんなことって、あるのか? この僕が? 何でなんだ? しかし、しばらくしてから、やはりこれが現実なのだと、 思い知らされた 僕は死んでしまうんだ 間もなくこの世を去る みんなと別れて、ひとり 死んでしまう
ひとりを感じ
ひとりを意識するためのひとり旅
ひとり旅に答えがあると直感した
当時の僕はどんなことを考え、空想したのだろうか 小学生3年生の夏休みに、余命宣告と癌告知を受けた もちろん、すべて初めてのことだった 「現実逃避」という言葉を習った記憶がなかったが、 このときに初めての、「現実逃避」を実践しようとした しかし、現実逃避どころか、空想さえも、僕の脳にはさせて貰えなかった 僕の脳では処理しきれないほどの情報量が、一気に押し寄せたからだ 「助けて」の一言も出ないほどだ 夜、みんなが寝静まった時に、ふと目が覚めた、そのときくらいしか、自発的な言葉を出すことが出来ない程しんどかった
心が息苦しい
そんなとき 僕の母親は、僕を見守るように、いつもそばにいてくれた 父親は、会社帰りには必ず僕の顔を観て、笑顔を見せてくれた しかし、 僕は両親の、その優しい気持ちに応えることができず、いつも無言だった でもね、心のなかでは叫んでいたんだ いつも、常に、助けを求めていた だけど、どうしょうもないことだって、理解していたから、 声に出せなかったんだ
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目的地に到着する
今、新幹線で目的地に向かっている あのときのことを言葉にするために あの時、僕が心で叫んでいた言葉を確認するために そして、 今回、目的の場所に、なぜだか引き付けられた 僕が小児がんを発症したときは、広島に住んでいた しかし、 今から向かう場所は、全く別の場所だ もう間もなく、到着する 次の駅が目的の場所だ 少しだけ気分が高揚してきた 朝食を取っていないからか、 身体がシートに沈み込んで、いつになく落ち着いていたが、すこし緊張も感じていた 複雑な心境だ きっと、これから明らかになる自らのルーツ ルーツを明らかにする言葉を知ることに対して、すこし照れくささを感じているのかもしれない
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ただいま
43年前のあのときの気持ちを甦らせる地に着いた 深呼吸をすると、全身の酸素が43年前の、 あの緊迫した時の、そのものに入れ替わった 当時の自分に、内面の、精神的な甦りができた気がする。
軽井沢
ここは、軽井沢 私の当時を思い出させるために、最適の場所として直感的に決めたのが、軽井沢だった 何度も繰り返しますが、私は広島出身だ しかし、 43年前の自分を、 そして、 その時の気持ちを蘇らすには、広島の風景がすっかり変わってしまっていた 私は、昨年の夏に広島へ帰郷していた
しかし、その際には、当時の記憶を蘇らすことはできなかった どうしても、当時の景色を追い求めてしまい、その事が、記憶の甦りを邪魔してしまうのだ
自分ひとりを見つめる場所
僕はひとりを感じるために、静寂を感じる場所に向かった 浅間山の裾野に広がる樹海 避暑地や別荘地としても知られる軽井沢には 特別な静寂が 僕は心穏やかな気持ちで、その樹海に走る一本道を歩いた
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静寂に包まれた時間
日常では、瞑想をする習慣にしている 瞑想をする目的は、気持ちをリセットし、 無になることだ 今、軽井沢の樹海の森のなかを歩いている ここでは、瞑想の時とは異なる 心静かに、 それは無に近いものだが、無ではなかった 良い表現が見つからないが、 私が求めていた「静寂」のような状態だった
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まっすぐ未来に向かう一本道
「この道がどこに向かうのか、なんて、分かるわけがない」 そんな風に、当時の僕は思っていた 「未来?」「将来?」 僕には先が見えない「一本道」にしか思えなかった
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ひとりでしか歩めない道
軽井沢の樹海の森の道 とても狭い一本道だった 「この道は、僕にしか歩めない」 そして、この景色も 感じる静寂も 今、ここにいる僕にしかわからないこと 当時の僕は、僕にしか歩めない道を歩み 悩み、辛く感じていた しかし、 その道は、「一本道」だったのかも知れない
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孤独を感じたあの頃
あの頃の孤独感の原因は 一本道 あの道をひとりで歩むのが怖かったからだ ひとりしか歩めない道には、他の人はいない もちろん、両親も しかも、 いつまでも続く長い一本道 どこにたどり着くのかさえ、わからない 後ろを振り向いても、まっすぐの一本道 歩くことを止めたとたん、樹海の森の木々が覆い被さる 逃げ道はなかったのだろう それに対して、僕は恐れを抱き、怯えた
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決めることが出来ない弱さ
僅か10歳の子供に、自身の人生を決めさせることは、 おそらく、出来ないだろう きっと、それを強いる両親もいないことだろう 「我が子には辛い試練を与えたくない」 親心は、当然決まっている しかし、 世の摂理とも言うべきか 両親の願いがすべて叶うはずもなく 我が子に、とても辛い試練が与えられる あたかも、天がその事で、両親に学ばせているかのように
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湖面を覗き込むと、自身の姿が写し出される その姿を観て、自身のことを自覚するのだ 天は、私たちにその事を自らの身に起きる現象で、気付かせようとしている 僕は先の見えない道の途中で池にたどり着いた
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怖さや不安を感じるのは学びの途中だからだ
このひとり旅でとても大切なことが、心に降りてきているように感じた 僕は頭をリセットし、心で感じるように旅をしている すると とても、すらすらと気持ちが降りてきた とても素直になれた そして、すべてを受け入れることができた むしろ、その事を言葉に変換することが難しく感じた 知らないことは恐れを生む 実は このひとり旅に出発する前に、 あることばが、僕の心に降りてきていた
🔷ガンコミュニティ「5years」
🔷note
https://note.com/fujinyosakoijazz/n/n171484c1fd62
人は知らないことに恐れを抱き それを知ったときに恐れから解放される 人は知ったことを人に伝え心豊かになり それを知った人は幸福になる 人が患った病の経験は、自身がそれを知るためであり、他の人を恐れから救うためのものなのだと思う
blog以外のコンテンツで、この言葉を配信していた
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ガンを告げられた人々の心の叫びをことばに残す
ほっし校長マガジン【Roots】8月号
ほっし校長マガジン【Roots】は毎月15日に配信いたします
最後までお読みくださり、ありがとうございました。 次回、9月号をお楽しみに
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