THE TIME   刻の記憶 【Roots】

ほっし校長マガジン【Roots】12月号

その一言を思いだし、探し出した時の心境や思い

その一言とは

【Roots】12月号

12月号
暗く深い闇の中に閉じ込められた私は、そこからの抜け道を探っていた。

どこまでも変わる気配のない環境は、私にそれを諦めさせようとしているかのようだった。

しかし

人生の抜け道は本当に存在する

「きっとあるはずだ」

「私にふさわしい場所と環境が」

辛くなったときは、この事を繰り返し、口にだしては、自分に言い聞かせてきた

すると、少しだけ心が休まった

大きく叫ぶことの出来ない自分に苛立ち、情けなくも想った

時に、人を憎み、羨んだ


どうしょうもない思考で、救いようのない者になりかけていたにちがいない。

そんな時だった、

あのひと言が頭に浮かんだのは

旅立ち

旅立ち

旅立ちの一歩

私の旅立ちの一歩は、何のためらいもなく始まった。

私の周りの人の間では、とても珍しかったはずだ

「中学を卒業したら、家を出る」

そう決意をした

私の意気込みは、予想以上に大きく固い決意となった

今の家庭環境からの独立

そして

私にとっての、人生の開拓


「新たな人生を歩み直したい」

そんな意気込みで、「第二の人生」に胸を膨らませた


道行く道中の、石ころを蹴飛ばす。

その石ころは、ノーバウンドで遠くまで一気に飛んでいき見えなくなった


そんな風に、両親から私の姿が映されたのだろう


何のためらいもなく、旅立ったと、言うと嘘になるが、

あながち間違ってはいない


両親は私の持病のことが心配で、発作の際には、どう対応するのがよいか、模索していたが、

その答えがまとまる前に、もう既に旅立った


旅立てば、その地に求める答えがあるはずだと、根拠のない自信が私を突き動かしたのだ


ずっと先のことなんか、
考えない!

そう決めて行くと、勢いが付いたような気になった

孤独と向き合う覚悟

それは、父親が母方の実家で飼っていた犬を山に放ったときのショックと近かった

母方の実家で飼っていた犬の名前は、
チャッピー

チャッピーは、もともとは、捨て犬だった

捨て犬チャッピーは、父親に拾われ、我が家で飼うことになった

人懐っこく、愛嬌のある顔や仕草がとても好きだった

捨て犬には珍しく、人にたいして吠えたり、威嚇したりすることは全くなかった


そんなチャッピーを我が家は手放すことにした


それは、母方のおばあちゃんが、とても気に入ってくれたからだ


「チャッピーと一緒に生活したい」



その一言がきっかけになった


チャッピーは、おばあちゃんにとっても可愛がられた


しかし、


年月の経過は犬の人生も終わりに向けて、止まることなく進み続けた


やはり、人間と同様に歳を取り、老いていった


チャッピーは、もうすでに老犬となっていた


もう、お散歩に歩くことも出来ないくらいになった


私には分かっていた


父親がチャッピーを山に放った理由を


チャッピーは、外で拾われ、そして、最後は、また拾われた頃と同じように

自由の身になった


それがチャッピーにとっての幸せなのだと


チャッピーは飼い犬の証の首輪を外され、

そして、父親に、その首輪の辺りを擦ってもらい、絡んだ毛並みを整えてもらった


チャッピーは気持ち良さそうな顔をしていた


そして、首輪の負荷を忘れるくらい、マッサージされたチャッピーは、

自らのことを、

そして、父親がこのようにすることの意味を理解したような仕草で

山の中に姿を消した

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自由と孤独と自立

私は理解をした


それがチャッピーの最後なのだと


チャッピーにとっては幸せな最後なのだと

しかし


最初は反対した


理由を説明できないけど、チャッピーとのお別れを拒否し続けた


チャッピーはいつも悲しい顔をして


幼い私と、父親とを交互に見つめていた


まるで、私たちの言葉の掛け合いを
理解しているかのようだった


私は、当時のチャッピーに自分の姿を照らし合わせていたのかも知れない


あのときの別れ


チャッピーは山の中にひとり消えていった


その姿は、私たちの目には「孤独」にしか見えなかった


しかし、


チャッピーは自由の身になったのだ


首輪と鎖に繋がれた、これまでの生活からの解放なのだから


チャッピーも同じように思っていたに、ちがいない


いや、私たちは、そう思い込んでいただけだ


中学を卒業した次の日に、わたしは家を出た


欲張って想定よりも多くの荷物をのせた赤帽のトラックには、私の独立心の気持ちも載せられていた


わたしは自由を手に入れる


しかし


家を出ることにためらいのなかった私の気持ちは、恐ろしく震え始めていた


それは孤独に対する恐れと、


自由に対する不安だった


わたしは、自由とは何かを理解していなかった


そして


孤独がどんなものなのかを理解していなかった


あの時の、チャッピーの気持ちが
私の心とリンクした


あの時のチャッピーは、孤独と自由に怯え、あの山奥に入っていったのだ

自由と対比の闇

私が求めた自由には闇がセットとなって付いてきた


それは


自由をプラスとすると、闇がマイナスになるからだ


この世は常に、プラスマイナスでゼロになるように出来ている


それは、この世のルールだからだ



しかし



当時のわたしは、その事を知らなかった



未熟だったからだ



楽しいことばかりを求め、束縛から解放されることばかりを求めた



それと対比のマイナスには、目を向けることはなかった



恐らくは人が求めるものには、プラスマイナスのバランスがとれることはないのだろう



だから、



天からの力が、調整してくれている



バランスを調整して



そして、私たちが



乗り越えられるように



その一言を思いだし、探し出した時の心境や思い

ほっし校長マガジン【Roots】12月号

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